1000円刻みで給与を上げる

2015年09月06日

プリモ・ジャパンは従業員30名ほどの企業から、法人営業に力を入れて提携先からの集客を強化することにより、社員数420名を超える企業へと急成長していました。
 
私は業績向上に応じる形で、ある年の給与改定の折に全社員の給与を一律1万円上げました。
ところが社員から相当な不満が噴出したのです。
そのほとんどが、優秀な社員たちでした。
合わせて2500万円の人件費をかけたにもかかわらず、優秀な社員のモチベーションが下がるという結果になったのです。
 
この経験は私にとっては衝撃でした。
きちんと差をつけられる正当な評価制度がないと経営は立ち行かないと実感し、その年を「評価元年」と銘打って、人事評価制度をゼロから構築していていくことにしました。
 
具体的には、人事評価を半年に一度しっかり導入することを決め、日々の行動と成果、MBOとコンピテンシーを連動して、一人ひとりのミッションを明確にしました。
 
半年後、この緻密な人事評価制度を受けて、社員の給与は前期と同じか、下がったか、上がったかの3つに分かれました。
上がった人の平均は2、3000円程度でしたが、目標への達成値が高かった人は最高2万円まで上がりました。
 
社員の反応はおおむねよいものでした。
給与が上がった人は次の期のモチベーションにつながりますし、同じだった人も納得していました。
 
下がった人の何人かは、不満に思って会社を辞めましたが、これも辞めるべき人が辞めたという感じです。
ドライにいってしまえば、会社の人事制度と処遇が合致すれば、結果的に会社の望んでいる新陳代謝が自然に進むわけです。
 
さらに前年度の1万円を全社員に与えるよりも人事評価制度を導入したほうが結果的に総費用を抑えられ、その後も業績が大きく伸びて継続的な黒字体質を築くことができ、会社としてはいいことずくめでした。
 
実際、小さい会社ほど1万円単位で給与を上げる傾向にあります。
経営者というのは金銭感覚が若干麻痺していて、一般社員の気持ちになれません。
1000円の重みがわからないから、1万円単位で上げていく方が多いのです。
 
1万円自体はあげ過ぎではないのですが、1000円で刻んでいくと、1万円まで10の刻みをつくることができます。
たとえば評価が+6となり6000円アップの人がいれば、+2となり2000円アップという評価もあって、初めて+10=1万円の評価というのが社員一同納得できるのです。
 
人件費というのは中小企業ほど個別交渉されるので、それに応えていくことが男気だという社長も多いのですが、1万円一律を1000円刻みに改善するだけでも社内の不満は抑えられるのではないでしょうか。
 
また人事評価制度を導入すると、もうひとつおもしろい現象が起きます。
 
プリモ・ジャパンで大いに経験したのですが、緻密な人事評価制度が有効に働いていると、給与が下がったことに対して「なんで私は給与下がったんですか。冗談じゃない!」という他責の精神ではなく、「今回は本当に申し訳ございませんでした。私の不徳のいたすところです。マイナス査定は甘んじて受け入れて、今後はそのようなことのないようにしっかりと自分の行動を変えて、貢献していきたいと思います」という自責の精神が確実に生まれます。
 
これは本当です。
「あしたのチーム」でもマイナス査定となった社員は毎回おりますが、不思議とマイナス査定のあとのほうがずっと成長します。
「給与が下がってなおモチベーションが上がる」というのが、人事評価のPDCAサイクルを回していくことの最たる果実ではないかと私は思います。
 
ちなみにマイナス査定は、最初に明示した査定がないと普通はできません。
もし明示した査定がないのにマイナス査定をする社長がいたら、社員の気持ちがわかっていないか、その社員に辞めてもらいたいと思っているか、どちらかでしょう。
そのような会社にいる必要はまったくないと思います。