いまだ続く安定志向と大手志向

2015年10月08日

日本で長らく続いてきた終身雇用という制度は、現在崩壊の途にあります。

説明するまでもないですが、終身雇用とは、企業などが正規に採用した労働者を特別な場合以外は解雇せずに定年まで雇用すること。年功序列型賃金とともに、長らく日本の雇用制度の特色でした。

その歴史をひもとけば、原型がつくられたのは大正末期から昭和初期にかけてです。
当時、熟練工の転職率はきわめて高く、5年以上の勤続者は1割程度だったそうで、企業側は足止め策として定期昇給や退職金、年功序列型賃金を導入しました。

この慣習が、第二次世界大戦後、労働力不足に悩む高度経済成長時代に、企業の一般的な制度として定着したというわけです。

しかし、1990年代から起きた平成不況のなかで日本経済は驚くほど停滞し、終身雇用と年功序列型賃金、略して「終身雇用・年功制」を維持することは困難となりました。
その大きな理由のひとつに、企業のビジネスサイクル、すなわち会社の寿命がどんどん短くなってきていることが挙げられるでしょう。

1983年、『日経ビジネス』は「会社の寿命(企業が繁栄を謳歌できる期間)は30年」と唱えました。
しかし、日本企業もグローバル化、ネットワーク化の波を受け、メインバンクや政府の保護が失われ、いまでは企業の寿命はわずか5年といわれています。

一方、人が働く年数は変わらず、65歳で定年としても、高卒や専門学校卒で45年、大卒で43年は働きつづけます。
つまり、企業の短いビジネスサイクルと、同一企業で定年まで働く終身雇用制度が、もはやアンマッチなのです。

いい大学に入って就職戦線を勝ち抜き、社内で処世術さえ学べば、高い生涯年収と安定、世のなかに対する信用や信頼を得られる、という時代は完全に終わりました。
「企業が自分の一生を守る時代は過ぎた」と実感している方は、少なくないのではないでしょうか。

しかしながら、就職活動をする学生たちの間ではいまだ安定志向、大手志向が続いています。
このことに私には非常に懸念を抱いているのです。