役職が人を育てる

2015年10月17日

私が新卒で興銀リースに入社した90年代後半は、まさに日本の大企業がアメリカ型成果主義を推してくる時代でした。
興銀グループももれなくヘイコンサルティンググループと契約し、コンサルタント料として数億円を支払っていました。

入社後まもなく、私は人事評価制度の変更に伴い研修を受け、そこで「コンピテンシー」という言葉を初めて耳にしました。終身雇用・年功制が過去のものとなり、アメリカ型成果主義が始まった時代の幕開けに遭遇したというわけです。

しかし、個人的にはこの新しい人事評価制度はあまりうまくいかないのではないかと思いました

なぜなら、上司は内心のところ評価や査定を面倒がって「自分の部下は全員Sで給与を上げてやるか」というレベルでしたし、一方の社員も「給料が上がるからまあいいか」というようなレベルだったからです。
人事課のイベントも年2回あるだけで、核となる目標設定も形骸化していました。
ある人材系企業が考えたルールを大手の企業になんとなく当てはめただけの形で、終身雇用・年功制を前提とした企業の本質はまったく変わらなかったのです。

私は4年後にプリモ・ジャパンに転職しました。
創業間もない社員30名ほどのベンチャー企業に就職した理由は、創業者のもとで働けば吸収できるものが多く、起業につながる最短の道となるのではないかと感じたからです。
最初はファイナンス部門に所属し、その後人事に移りました。

ところが当時は人事評価制度といったものは何もなく、優秀な人ほど離職率が高くて、正直頭を抱えました。
社員の間で人事や評価に対する不平不満が募っていることが日々見て取れました。
 
そこで私はふたつのことを学びます。

ひとつ目は、学歴に関係なく優秀な人はいるということです。

実はプリモ・ジャパンの全国展開を急進するうえで、全員正社員で雇用をしていた時代がありました。
その結果、多くの離職者が出ましたし、揉め事や不祥事なども頻繁に起きていたと記憶しています。

一方で、中卒や高卒でもたいへんに優秀な人がいることを実感しました。
新しい店舗の立ち上げの際に店長に抜擢した瞬間、経験や学がまったくなくても、的確なマネジメントをしはじめる人。
あるいは経営のトップ、館の長として会議で素晴らしい発言をするようになった人もいました。
本社に勤める高学歴の社員が、なんとなく偉そうなことはいうけれど、自分の手はまったく動かさずに、いかに70%程度で仕事をまっとうしようかと熟考しているのに比べ、彼らは100%以上のパフォーマンスを示してくれたのです。

人に真剣に仕事をしてもらうには、また本領を発揮させるのに必要なのは、役職、つまりポジションを与えることだと理解しました。

人は権限を与えられないとわからないことがたくさんあります。
上司の背中を見ているだけでは、上司が受けている強い風は感じられない。矢面に立って初めて見える景色というものがあるのです。

ですから、会社は社員に対してひとつ上のポジションを与えること、大きなチャンスを与えることが肝要です。
そうすればおっかなびっくりだとしても、ものすごいスピードで吸収していく社員が必ずいます。

「鶏と卵」ではないですが、Aというスタッフを課長にするかどうかというときに、「課長になれるか?」といえば答えは「ノー」です。なぜならこれまで課長の仕事をしたことがないからです。

そこでたいがいの方が、「スタッフとして100点を取れていないのに、課長なんてまだ早いのではないか」という考えに陥ります。
しかし、そんなことをいっていると誰も課長になれません。
中小企業やベンチャー企業では役職者を輩出できないことになってしまいます。

ですから、自分の仕事に邁進し、顧客をつくって自己成長したと思える人間がいるのであれば、ぜひポジションを上げてみてください。
その社員は絶対に期待に応えようとします。
私個人も劇的に変わる人をたくさん見てきています。

逆に、長くスタッフにおいておくと、仕事のクセがついてしまったり、いまさら役職が上がっても面倒だという雰囲気が蔓延したりして、ポジションを上げづらくなることが多々あります。
やはり若くて吸収力のある人間はどんどん上の役職に上げ、ブレイクを後押しすべきです。もし結果が出せなかったのであれば、一度降格させて、機会をもう一度窺えばよいのです