フェアな労使関係のために

2016年10月12日

一生働かない(働けない)企業にもかかわらず、なぜある種の人はあえて中小企業やベンチャー企業で働くのでしょうか。
それはやはり、大手企業では得られない何かがあるからです。安定性に欠けるというデメリットがあったとしても、自己成長という大きなメリットを得られます。
仕事の裁量を若くして得られる、または楽しくやりがいのある仕事ができる。だから人は中小企業やベンチャー企業で働くのです。
(ちなみにこれは一流大学を出て、どのような超大手企業でも入ることのできるきわめて優秀なビジネスパーソンが、あえて中小企業やベンチャー企業を選んでいる、という前提で語っています。その前提が崩れると、「彼は大手に入れないから中小に入ったのでしょう」という変な議論になってしまいます。そうではなく、二者択一のできる優秀な人、選択肢を持った人が大手に行った場合と中小に行った場合を想定しています。)

ところで、ひとつおもしろいデータがあります。アメリカのジャーナリストであるスラリー・プロトニック氏が1960〜1980年にある調査を行いました。
ビジネススクールの卒業生1500人を対象に、「いますぐ夢を追いかけるか、まず経済的な安定に役立つ職業を選ぶか」という質問をしたところ、「すぐに夢を追いかけ、経済的なことはあとで考える」と回答したのはたったの17%でした。

しかし、20年後、夢の仕事を選んだ卒業生255人中、100人は大富豪になっており、
経済的な安定を求めた卒業生1245人のうち大富豪になっていたのはたったひとりだったのです。
いますぐ夢を追いかければ、経済的に成功する確率は39%。夢を後回しにすれば、成功する確率は0・08%。これは中小企業やベンチャー企業に入ろうとする人たちの背中を後押しする愉快な話だと思います。

話を戻しましょう。中小企業やベンチャー企業に行くということは、将来独立を考えているかもしれません。
とにかく自分自身の成長を成し遂げたいとか、仕事の実感を得たいと考えている人たちが、中小企業やベンチャー企業に行くわけです。定年まで雇っていただきたいと思っている人は皆無といえます。

企業側も、彼らに定年まで働いてもらいたいとは思っていません。ある程度、若い労働者を安く雇っていかないと中小企業を経営することはできないからです。ベンチャー企業の経営者100人に「雇用している全員を定年退職まで雇用したいか?」と質問したら、100人が「雇用したくない」と答えることでしょう。

繰り返しになりますが、経営者として定年まで面倒を見ないのであれば、短いタームに対して目標を達せられたか否かを査定し、それに対して報酬を支払うべきです。そういう責任が経営者にはあるのです。
終身雇用・年功制ではないのに、あたかも振る舞いだけは家族経営で、「細かいことはいいじゃないか。欧米じゃないんだしさ。まあ、頑張ってくれよ」というのは偽りであり、嘘つき経営です。
「規模が小さいからまだいいだろう」ではなく、従業員がひとりでもいるのであれば、いますぐ人事評価制度の構築に着手すべきです。それが社員に対する誠意であり、労使の関係でいえばフェアであるということです。